ワンダースクール通信 591
チャイロスズメバチ 2005.6.30
埼玉県さいたま市秋が瀬公園産のチャイロスズメバチの女王バチです! 今回の飼育セット
6月17日(金)は、クサフジの花が咲きはじめたピクニックの森。そろそろミドリシジミの季節ですからね。でも、曇っていたのでチョウの姿は少なく、ゼフィルスの仲間もミズイロオナガシジミのみ…
「びしょびしょしてるね」
これは、ひろき。
「でも、フカフカしていて気持ちいいな」
こっちは、つばさ。
オオブタクサやセイタカアワダチソウの草丈が伸びはじめた周回路です。
と、まあ、ここまではいつものワンダースクールでしたが、ヒキガエルの池近くの樹液ポイントで事件発生!
「もしかして、チャイロスズメバチ」!?
今年入ったばかりの1年生たちには、ピンとこないのは無理もないけれども、これは本当に一大事です!
実は、昨年6月2日の下見の時に、チャイロスズメバチを探しに来ていたsundog師匠に子供の森で出会って、たか爺は「ほんとかよォ〜」とびっくり(444参照)。そしたら、そのあと6月7日に、飛んでいる女王バチを見つけちゃったんだよねぇ〜(448参照)。でも、その時は、師匠しか信じてはくれなかったよなぁ…
たか爺としては、普通はまず写真なんだけれども、ここはとにかくネットです。年のせいで(…)、今期何度もオオスズメバチの女王バチを振りのがしていたのに、なんと一発で入った! 急いで観察用ケースに入れて見てみたら、多分間違いない。その場で師匠に電話をして、念のためそのまま持ち帰って調べてみたら、本当に間違いなし! 30oあるので女王バチです。たか爺としては、自分で自分の目撃情報を検証できたわけで、本当にうれしかったよなぁ〜。
でも何よりも、秋が瀬公園に「幻のスズメバチ」と言われているチャイロスズメバチがいたという事実、これはもう本当に感動ものです。子どもたちに渡している資料『いのちに かかわる こともある あぶない生きもの』では、「みんなを いつも つれていく ところには、すくなくても 5しゅるいの スズメバチが くらしています」となっていますが、「6しゅるい」に訂正ですね!
日本にいるスズメバチは3属16種。そのうち大型のスズメバチ属は7種類ですが、南西諸島にいるツマグロスズメバチ以外の6種類がすべて秋が瀬公園に生息しているわけです。オオスズメバチ、ヒメスズメバチ、コガタスズメバチ、キイロスズメバチ、モンスズメバチ、そしてチャイロスズメバチ! キイロスズメバチはこの時期あまり見かけませんが、「冬だってクワガタさがし」の時には越冬している女王バチが毎年見つかっています。そういえば、別属となるクロスズメバチも1度見つかりましたね。
チャイロスズメバチは、『改定埼玉県レッドデータブック2002』によると、「摘要:記録のある県は少なく、各地とも多くない」。「分布の概要:さいたま市(旧浦和市)、加須市、川島町、大滝村の4ヶ所で記録された。生息状況:上記の1ヶ所ずつであるが、近年関東地方での記録が多くなってきた」とあります。「さいたま市」とはもちろん秋が瀬公園のことですが、1992年の記録? 師匠が埼玉昆虫談話会の会報に報告文を書いてくれる予定ですが、さて、埼玉県での採集記録としては何例目になるのでしょうか? 楽しみです。
チャイロスズメバチの女王バチは、モンスズメバチやキイロスズメバチの最初の働きバチたちが羽化する頃に、相手の女王バチを殺して巣を乗っ取るという不思議な習性をもっています。スズメバチの女王バチにとって、越冬後まずは自らの栄養補給をして、たった1匹で巣を作って卵を産んで最初の働きバチたちを育てる時期は、相当大変だっていうことなんだろうね。秋が瀬公園にはセミが多いから、セミを幼虫のエサにしているグルメなモンスズメバチも多い。日没後も活動するので、「夜の森探検隊」では厄介なやつらです。その点だけで判断すれば、秋が瀬公園はチャイロスズメバチがいてもおかしくはない環境なんだけれどもね。
さて、観察用ケースに入れたまま持ち帰ったチャイロスズメバチですが、どうせすぐ死んじゃうだろうから、25日の「ミドリシジミを見る集い」の時に証拠品の死体を師匠に渡して、「埼玉県産チャイロスズメバチ」として標本にしてもらえばいいやと思っていました。でも、すでにかなり弱っていて、見ていたらなんだかかわいそうになってきちゃった… で、だめもとで、たか爺は生まれて初めてスズメバチの飼育に挑戦です!?
1日に羽化したミドリシジミの幼虫を飼っていた30cmの飼育用ケースを縦置きにして、カブクワ用の昆虫ゼリー1個とゼリーがじわじわにじんでくるタイプの容器をセット。途中でエサの交換はしたくないからねぇ… 中に入れてあげたら、ゼリーを少しなめて元気回復です。
師匠によると「注意することは、水を切らさないこと。水が無くなるとすぐ死にます」とのこと。で、今度は水を入れたワンカップに水槽ろ過用のマットを丸めて突っこんだものを入れてあげました。これなら溺れる心配もない。あとは1日何度か霧吹きですね。
狭いケースの中をブンブン飛び回ると消耗しちゃうらしいので、タオル2本をかけて遮光してみたり、霧吹きで直接水をかけてやってみたり、生きものをこんなに真剣に飼ったのはたか爺も久しぶりだな!?
たか爺の家で8泊9日のあと、25日に生きたまま師匠に無事手渡すことができて、本当にほっとしましたねぇ… かわいそうだけれども今頃は、スズメバチのDNAを研究されている大学の先生のところで、DNA鑑定中かな? あとは師匠にお任せです。
スズメバチは、昆虫の世界ではライオン! たか爺は大好きな生きものだけれども、世間ではどうも誤解されやすいようで、誤った報道も多いですよね。最後に『いのちに かかわる こともある あぶない生きもの』より一言。
「スズメバチや、マムシや ヤマカガシがいる ということは、えさになる虫や、ネズミや カエルが たくさんいる ということ。虫が たくさんいる ということは、虫がたべる 木や 草も たくさんある しぜんが ゆたかな ところなんだね。かれらは、そんなしぜんを にんげんに あらされないように、まもって いるのかも しれないよ。
きみたちの まわりから、もし かれらが いなくなって しまったら、ゆたかな しぜんが なくなって しまった ということかも しれないね。
そんな せかいで、にんげんだけが いきていくこと、できるのかな?」