ワンダースクール通信 920
「指定管理者制度」がもたらした弊害〜秋が瀬公園の場合〜 2008.4.20

 4月6日は、快晴の日曜日とあって人も出ていましたが、駐車場やバーベキューエリアは混んでいても、森の中はそれほどでもありません。
 でも、炊飯場には大きなスピーカーを持ち込んで騒音をまきちらしている一団がいたので、ピクニックの森の生きものたちはもちろん、周りの人たちもさぞかし迷惑だったでしょうねぇ… 
 こういう人たちを野放しにしたまま注意もせず、バーベキューエリアと駐車場ばかりやたらと拡張し続けている公園管理者は、いかがなものでしょうか?
 左の「ゾーニング」図のオレンジ色の部分は「利用緑地ゾーン」。
 指定管理者制度となってから、中心部に今まではなかった「バーベキューエリア」が3ヶ所も作られました。土日には「緑地」内に臨時駐車場まで設けられます。以前は秋に草地を飛び回っていたトノサマバッタも、ここ数年減り続けていますよね…
 公園管理者が利用者拡大のみを至上命題とせざるを得ないのは、「指定管理者制度」がもたらした最大の弊害です。少なくともバーベキューエリアの利用ルールの徹底と、違反者に対するきちんとした対応をお願いしたいところですね。
 水色の部分は「スポーツ施設ゾーン」。
 土日には最近、少年野球関係者の駐車マナーの悪さが目立つようになりました。駐車場が空いている場合でも、他の公園利用者の迷惑もかえりみず、グラウンドに近い路上や車の転回スペースに車を停める人たちが増えています。
 それこそ「緑地」内ではなく、「スポーツ施設ゾーン」の一角に専用の駐車スペースを設ければ済む問題だと思いますけれどもね。
 また、どちらがどちらの手のひらの上に載せられているのかはわかりませんが、公園管理者と共に利用者拡大を目ざして公園の整備を推し進めようとしている人たちも、いかがなものでしょうか?
 「環境」だ「環境教育」だ、「市民参加型公園」がどうだこうだと言いながら、「次世代に受け渡したい秋が瀬公園・荒川河川敷の自然・こころ」をすでに忘れてしまったようです。
 驚くべきことに、市民も公園利用者も無視して、事前に公園管理者との密約によって掲示板を設置することを決めた上で、「市民が出会う『掲示板』づくり」などというワークショップを開催する学生サークルまで出てきました。茶番劇です。いかにもバーチャル世代の学生が考えそうなことですが、出会い系の掲示板はweb上だけにしてもらいたいものですね…
 昨日もこの学生サークルが開催したと思われる催物のポスターが、いつまでも貼られたまま汚らしく残されていました。ゴミに限らず、自然の中へ持ち込んだものは必ず持ち帰るという、最低限のルールも知らないようです…
 これもある意味では、「指定管理者制度」がもたらした弊害の1つですね。
 黄緑色の部分はかろうじて残された「自然保護緑地ゾーン」。
 秋が瀬公園の自然、そこに暮らす生きものたちは、予想どおり「指定管理者制度」によってこれまでの歴史のなかで今最も危機に瀕しています。
 そもそもある地域の自然というものは「ゾーニング」によって一部分を守ればいいというわけではなく、その周りの状況の変化によっても大きな影響を受けます。これからの5年間で秋が瀬公園の自然環境は、「バーベキューエリア」による分断また利用者拡大にともなう「人為的インパクト」によって、大きく変わっていくかもしれません。
 それとは逆に「自然保護緑地ゾーン」は今後、子どもたちが自由に生きものたちと遊べる場ではなく、大人のサンクチュアリ的なものとして整備されていく可能性もあります。とりあえずは非力ながら、一市民、一公園利用者として、子どもたちといっしょに注意深く見守り続けていく必要がありそうですね。