ワンダースクール通信 1035
田んぼの生きものしらべ〜里山体験プログラムD-1〜 2009.6.23

 NPO法人むさしの里山研究会の会報『里山通信』用の原稿を転載します。

里山体験レポート 34

田んぼの生きものしらべ

自然体感塾ワンダースクール たか爺

6月20日(土)の「田んぼの生きものしらべ」には、大人7名・子ども6名の13名が参加。まずは先週田植えを終えた田んぼ生きもの公園の田んぼ、次に田んぼよりも先に水がたまった池で、生きものたちを捕まえてもらいました。
 カイエビの仲間を見つけられなかったのは残念ですが、カブトエビやホウネンエビなど、田んぼならではの不思議な生きものたちに出会えてよかったですね。最後には、どんな生きものたちが見つかったか、新井さんに解説してもらいました。
 以下、この日に写真を撮ることができた生きものたちを何種類か紹介しておきます。せっかくなので、農と自然の研究所・生物多様性農業支援センター発行の『田んぼの生きもの指標 あなたのまなざしを待っている世界』(むさしの里山研究会も製作協力団体になっています)からちょっと引用させてもらって、補足もしておきます。今回参考にさせてもらったら、それぞれの生きものに関して「指標の内容」「1年間のようす」「他の生きものとの関係」「生活史の特徴」「生態の特徴」「農業との関係」「人間との関係」「絶滅危惧種」の項目別に簡潔にまとめられていて、なかなかのすぐれものでした。現在ノアで販売中です(宣伝もしておかないと…)。

 
カブトエビ(右は裏側)

 田植えの際にも見つかりましたが、1週間でここまで大きくなるとはびっくりです。「代かきをきっかけとして孵化し、ほぼ毎日脱皮を繰り返して約20日で成体となる」そうなので、納得ですね。
 日本には、アジアカブトエビ・アメリカカブトエビ・ヨーロッパカブトエビの3種類いるようですが、「種の判別は難しい」… 「田面に生えてくる発芽したばかりの柔らかい草」を食べてくれる「草取り虫」だけれども、「田んぼの生物多様性」から見ると多ければいいというものでもなさそうです。

 
ホウネンエビ         ヌマガエル(左)とニホンアマガエル(右)のオタマジャクシ

 やはり田植えの際にいたホウネンエビも、カブトエビとよく似た「生活史の特徴」をもち、「孵化後20日もすると土の中に産卵」します。「卵の寿命は10年以上」! でも、田んぼ生きもの公園の田んぼは放棄されてからいったい何10年!? 「泳ぎながら水中の植物プランクトンを鰓脚で集めて食べる」姿は、なんとも優雅ですよねぇ〜。「江戸時代には『田金魚』として鑑賞用」に売られていたそうです。

 オタマジャクシは田んぼには小さなもの、池には大きなものが泳いでいましたが、これは孵化した時期が違うだけのようです。成体の方もヌマガエル(左の写真は背中線がはっきりした個体)とニホンアマガエルの2種類が確認できました。
 ニホンアマガエルは関東では一番よく見かけるカエルですが、ずっと西日本のカエルだと思っていたヌマガエルも寄居には多くて、以前から驚かされていました。温暖化の影響なんでしょうね。オタマジャクシは「水温が40℃近くになっても平気」で、「西日本では近年最も多いカエル」だそうです。
 ニホンアマガエルは「田んぼから離れて、畑、果樹園、庭、林地などに移動するものが多い」し、田んぼに残ってもエサをとる場所やエサにする虫が違うので、「主に水の中にいて、水面上の生きもの、あるいは株元の生きものを食べている」ヌマガエルと競合することはないのかな?

  
コガムシ               (コ)ガムシの幼虫

 水生昆虫では(コ)ガムシの幼虫が多く、コガムシの成虫や草をからめた卵のうも見つかりました。「幼虫は肉食で、ヒメモノアラガイなどをよく食べる」そうですが、ヒメモノアラガイらしき貝はいくつも見つかりませんでした。今度は貝の方もちゃんと調べてみたいですね。
 それにしても「牙虫」だけあって、なかなかかっこいい幼虫だと思うのは私だけ? 同じ入れものにいっしょに入れておくと、幼虫同士でも喧嘩(共食い?)するし、大きなオタマジャクシにもすぐに食いついていました。

  
コシマゲンゴロウと(コシマ)ゲンゴロウの幼虫           イネミズゾウムシ

 コシマゲンゴロウと(コシマ)ゲンゴロウの幼虫も見つかりました。コガムシと違って成虫も肉食なので気も荒いようです。左上の2匹も交尾行動かと思ってしばらく観ていたら、喧嘩していただけのようでした…
 イネミズゾウムシは水生昆虫ではないのに、水中でも普通に活動しているように見えました。私は初めて見たので感動ものでしたが、「イネに寄生する侵入害虫」だそうです…
 アメンボの仲間はちゃんと調べなかったけれども、ヒメイトアメンボも水面を歩いていましたね。確かに「極端に細い体で水面を歩く面白い生き物だが、その気になってみないとまず気づかない」かもしれません。
 用水路では、食べでのありそうな大きなアメリカザリガニやドジョウも捕まっていました。池にはアメリカザリガニの赤ちゃんも。
 「乾田化で田から姿を消した」とはいえ、田んぼ生きもの公園の池ではあっという間に増えると思うので、田んぼにも影響が出るかもしれません。子どもたちは喜ぶだけなんだろうけれども… それでもまあ、除草剤のためかミジンコ1匹見あたらなかったお隣の田んぼよりはいいかな!?

 ノアでお弁当を食べてから、新井さんたちは田植えの続き。ワンダースクールは風布川へ移動して、午後は「沢の生きものさがし」です。
 甲殻類はサワガニ、両生類はカジカガエル、水生昆虫はオナガミズスマシやモンキマメゲンゴロウ、アメンボもシマアメンボに変わり、ヤゴ・カゲロウ・カワゲラの種類も多くなります。午前と午後とで田んぼと沢の生きものとの比較も楽しめて、個人的にはかなりお気に入りの企画になりそうですね。