『子どもと自然大事典』(2011・ルック)
第2部「子どもとモノ」 第2章「子どもと地球」より
「うわぁ〜、きもちいい! 川って最高だ」「なんか野生にかえったような気がする」
子どもにとって川ほど楽しい遊び場はない。ひとたび足を踏みいれると、幼い子どもでも嬉々として川の中を歩きまわる。はじめは水の冷たさに驚きながらも水のひっかけっこが始まり、泳いだり潜ったり飛びこんだりして遊びはじめる。夏休みに子どもたちを連れていく「水ガキばんざい! 川遊び」で毎年くりひろげられる光景である。
子どもは遊びながら全身で川を感じとり、本来の意味での「生きる力」も身につけていく。川の中を歩くだけでも水の冷たさや流れを感じとることができるし、浮石や苔ですべりやすいものもあるでこぼこした石の上を歩くことで、バランス感覚や筋肉も鍛えられる。転んだり深みにはまったりすれば、その後はより慎重に歩くようにもなるだろう。
泳いでみれば、川には流れの速い場所(瀬)とゆるやかな場所(淵)があること、流れに逆らえば川の流れの速さも体感できる。潜ってみれば、浮力を感じとりながら、川の中の様子や生きものたちの姿も見ることができる。飛びこみにいたっては、年齢や身体能力以前にチャレンジ精神がものをいったり、友達と高さを競い合うスポーツのようになったり、そして何よりもいっしょに遊んでいる子どもたち同士でコミュニケーションをとりながら、常に周りの状況に注意をはらうようにもなる。子どもたち同士で何が危ないのか身をもって知り、自然とルールも作られていくのである。
また、川は生きものの宝庫であり、生きものを捕まえて遊ぶこともできる。これは夏に限らず春から秋にかけて楽しめ、渓流ならサワガニとりや水生昆虫さがし、中流の岸辺や小川ならガサガサや仕掛けを使ってかなりの種類の生きものを捕まえることができるだろう。捕まえた生きものを観察したり、持ち帰って飼ってみたりすることによって学びにつなげたり、食べられる生きものならばぜひ子どもにも食べさせてみたいものである。
さらに、河原の石や流木を使って子どもはアーティストになることもできる。たとえ道具は持ってきていなくても、河原には川の流れが作りだした作品がごろごろ転がっているはずだ。それを探しだすだけでも楽しいものである。もちろん気に入ったものは持ち帰って、ペイントしたり組み合わせたりして作品として仕上げることができれば、楽しい川遊びの思い出にもなる。
川遊びは「プールよりも楽しい」! 川は子どもにとって、自分の能力や興味に応じて自由に遊ぶことができる場所だからなのである。だが、残念ながら現在、子どもは貴重な原体験の場である川から完全に遠ざけられてしまった。身近に子どもが自由に遊べるきれいな川が復活し、積極的に子どもを川で遊ばせたいと願う親が、今後は増えていってほしいものである。
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