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自然体感塾ワンダースクール

『子どもと自然大事典』(2011・ルック)
第5部「子どもと自然、社会」 第3章「地域活動と子ども、自然」
より

 自然体験や生活体験が豊かな子どもほど道徳感や正義感が身についているという極めて当り前の結論を導きだした調査を文科省が行ったのは1998年。だが、その後の的外れな「教育改革」の結果はどうだったであろうか?
 そもそも自然体験や生活体験は学校教育とは無縁なものであり、地域社会の中で子どもたちが自ら主体的に体験し、また家庭での生活に必要とされて日常的に体験してきたことである。だからこそ、道徳感や正義感などといった言葉以上に大切な多くのことを、体験にとどまらず経験として自然に身につけることができたのではないだろうか。
 子どもたちが主体的に関わることができる自然環境を地域社会の中に取りもどすことができれば理想的である。だが残念ながら、今の子どもたちには自然体験どころか放課後に子どもだけで自由に遊べる場所もなければ時間もない。家庭でも生活体験とは無縁なコンビニエンスな生活を送っている。
 そんな子どもたちを、かつては身近にあった自然の中へたとえ週に1回でも月に1回でも定期的に連れ出してあげたい。春夏秋冬、季節を体で感じながら友だちといっしょに、春は池や小川で生きものさがしやザリガニ釣り、夏はクワガタやカブトムシなどの虫とり、秋は木の実や草の実、葉っぱでの植物遊び、冬は土手すべりなど、旬の生きものたちや旬の野遊びで遊ばせてあげたい。そんな思いで立ち上げたのが文字通りの「在野の私塾」ワンダースクールである。
 ウィークデーの放課後や土日に、継続的に自然と出会える場、自然と共感できる場を作ることによって、子どもたちは子どもと自然本来の関係を取りもどすことができるだろう。もちろん、主役はあくまでも子どもたち自身である。大人は見守りながら、自然の中での危険や自然とのつきあい方など最低限必要なことを伝え、子どもたちと「センス・オブ・ワンダー」を共有するだけで充分なのである。
 学校からも親からも解放された子どもたちは、目を輝かせながら自然の中でいきいきと遊びはじめる。子どもたちが本来もっている「センス・オブ・ワンダー」や生きものとしての本当の生きる力が目覚めるのに、そうたいした時間はかからない。機会さえあれば、子どもはもっと自然の中で遊びたい生きものなのである。
 年数回のイベント的な活動ではなく月13回のペースで何年も参加し続ける子どもが多いので、自然との関係がより深い原体験となり、自然との関わり方も経験として身につけていく。また、自然の中では「異年齢の遊び集団」としての効果もさらに大きくなる。他の生きものたちだけではなく他の人間や社会との関わりの中での生き方も、自然に身につけることができるのである。


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