ワンダースクール通信 1227
秋が瀬公園のフクロウ騒動 2011.6.23
左上:狭い散策路をふさぐどころか、道をはずれてふくれあがる烏合の衆。普通の人たちにとってはただでさえ異様な集団なのに、こうなるともう誰も通るどころか近づけもしません…。2011.5.18
右上:左上と同じ場所です…。右端の「植生調査」のお知らせは左上右端と同じもので、隣の「この植物(チョウジソウ)を踏まないでください」の注意書きは19日以降に立てられました。人がすれちがえる程度だった道も、騒動が治まった頃には車でも通れるようになってしまいました…。2011.6.11
一昨年3月のレンジャク騒動(1000 1003 1004)に続き、今年の5月はフクロウ騒動です。烏合の衆がまたやってくれちゃいましたね…。
先日も、都下の公園の「野鳥撮影される方へ」の注意書きに触れました(1222)。これはまあ、公共の場での最低限のマナーです。秋が瀬公園でもよくあるケースですが、ご自分の趣味のために他の利用者の通行を妨げてはいけません。ところが最近は、こういう常識でさえ通じない「野鳥撮影される方」が急増しているので、こんな注意書きがやたらと並んでしまうわけです。
今回のフクロウ騒動もやはりこのパターンから始まりました。日本野鳥の会でさえ烏合の衆の急増にはかなり苦慮しているようで、ホームページには従来からのフィールドマナー「や・さ・し・い・き・も・ち」に加え、「野鳥写真マナー」や「野鳥観察マナー」まで載せています。すでに全国的な問題となっているわけですね…。
「通行の邪魔にならないよう撮影してください。特に道で集団になっていたり、三脚を並べていたりすると、通行の迷惑です。」
これは、日本野鳥の会のホームページの「野鳥写真マナー」より引用(以下も同様です)。
「この植物(チョウジソウ)を踏まないでください」の注意書きと赤いテープも、右上の画像程度の効果はあったようです!? まあ、「絶滅危惧種」だけを護ればいいというわけではありませんけれどもね…。烏合の衆に踏みつけられた場所には、靴に付いていたどこかの植物の種も蒔かれてしまうし、森の中へも入りはじめている外来種のオオブタクサやセイタカアワダチソウも侵入しやすくなるんじゃないのかな?
自然度の高い秋が瀬公園の場合には、烏合の衆が集まると人だけではなく、他の生きものたちも大迷惑をこおむってしまいます…。文句ひとつ言えずに踏みにじられるだけの生きものたちです。人の迷惑も省みず長時間たむろしているんだったら、せめてその場やこの公園の生物多様性にも少しは目を向けてもらいたいものですね。
幸い今回は公園管理者の対応がすばやくて、被害は最小限にくいとめられました。烏合の衆のなかには、レンジャク騒動の際に注意したら逆ギレしてつかみかかってきそうだった危ない爺様たちも増えているようなので、触らぬ爺にたたりなし!? 万が一子どもたちに何かあってはいけないので、たか爺も今回はひたすら我慢がまんです…。
「公園やいろいろな人が利用する公共の場所などでは、撮影のために植物の移植や剪定、土砂や岩石の移動といった環境の改変は避けましょう。」(同前)
従来のフィールドマナー「い・一本道、道からはずれないで」だけでなく、ここまで書かれているとは全国的に事態はかなり深刻なようです…。
久しぶりにピクニックの森へ行った5月6日の時点ですでに、フクロウの営巣地のまわりにはロープが張られていました。烏合の衆が集まる前に、土日祭日に植生調査を続けられている方たちか、今や極めて少数派の正しいバードウォッチャーの方たちの助言でもあったのかな? これは巣立ち前のヒナたちにとってはせめてもの救いでした。
でも決して、ロープの中へさえ入らなければいいという問題ではありません。巣になっていた木の洞から姿を見せるヒナを狙って連日押しかける烏合の衆は、従来のフィールドマナー「ち・近づかないで、野鳥の巣」の説明だけでは理解できない烏たちですからね…。
「営巣中(巣作り中含む)の巣(巣穴・巣箱・巣台などを含む。以下同じ)、およびその巣にいるヒナあるいはその巣に入ろうとしている親鳥の撮影は避けましょう。」(同前)
さらに、最近の烏たちはネットも駆使するので、事態は日々深刻になります。騒動のさなか、ちょっと検索してみたら唖然…。少なくとも巣にいるヒナの写真をネット上にアップしている方たちはみな「野鳥写真マナー」の違反者たちです。マナー違反を自らネット上に公開して恥ずかしくないのでしょうか? なかには巣を見つけたことや巣のある場所まで発信している伝言板や、マナー違反者たちの集まりのような掲示板までありました。新たな烏合の衆が連日押しかけるわけです…。
「野鳥の写真を撮ったり印刷物に掲載したりインターネットで公開したりする場合は、『やさしいきもち』に加え、以下のマナーをお守りください。」
「印刷物やネットなどに写真を掲載する場合は、以上のことに留意して撮影されたものを使用するようにしましょう。」
これは「野鳥撮影マナー」の冒頭と最後の文章ですが、マナーとは無縁な烏合の衆にとっては烏の耳に念仏でしょうね…。
「観察情報をネットに発信したりマスコミなどへ提供したりする場合は、その場所へ観察する人が大勢集まりトラブルになることもあるので、細心の注意を払うとともに、地域での事前の相談も行うようにしましょう。」
こちらは、「野鳥観察マナー」のほうより。「国内への渡来の少ない珍しい種」の観察情報に関してとはなっていますが、レンジャクやフクロウでも大変なことになっているのに、そんな鳥に来られたりしたら更地だらけの公園になってしまいますよね…。
左上:巣立ったヒナを狙った烏合の衆が踏みこんだ痕です…。手前が道ですね。
右上:右側の薄茶色の部分が烏合の衆の拡げた場所ですが、ここはまあ道なので草刈りの手間が省けた!? でも、この日は誰もこの道を通れなかったでしょうね…。
とりあえず、3羽のヒナたちは無事に巣立って何よりです。5月24日あたりから順番に巣から出てきて、周回路から3mと離れていない木の枝にじっととまっていました。それはそれはほんとうにかわいいなんてものじゃありませんよねぇ〜。25日と27日の子どもたちもゆっくり見ることができました。野性のフクロウのヒナをこんなに近くで見られるなんて、もしかすると最初で最後かもしれませんよ。
でも、大砲をかかえた烏合の衆には近すぎるので、当然のようにまた道をはずれて三脚を並べます…。28日に親鳥を撮っていた烏合の衆も、別の場所を更地にしておりました。
左上:6月になってからメインの周回路上に設置された注意書きです。
右上:6月5日には、烏合の衆は道をはずれて森の中へ集まっていました。
左下・右下:夏草や烏合の衆が踏みし痕…。右上の烏合の衆の仕業です…。
左上:烏合の衆のおきみやげ…。お茶のペットボトルでしょうか。
右上:また新しい注意書きを設置…。
6月に入り、巣立ったヒナたちが移動するようになると、烏合の衆は今度はメインの周回路上にたむろするようになりました。公園管理者も急遽新しい注意書きを設置します。5日には親子のザリガニ釣りがあったので、参加者が集合場所へたどりつけない心配もありましたが、この日の烏合の衆は森の中で助かりました。
でも森の中は、夏草や烏合の衆が踏みし痕…。公園管理者はまた新しい注意書きを設置します。ほんとに大変なご苦労で、頭が下がりますね。たか爺なら「お願い」や「お知らせ」ではなく「烏合の衆の皆様へ」としたいところですが、公園管理者の立場ではねぇ…。先日の都下の公園の注意書きのように「野鳥撮影(観察)の皆様へ」ぐらいははっきりと書いておくべきだと思うので、今度お会いするときには日本野鳥の会の資料持参で提案しておくつもりでいます。
最後に、烏合の衆の問題は残念ながらもはや全国レベルです…(何度でも書いておきます)。公園その他のフィールドを管理されている方々は大変だと思いますが、烏合の衆同士や他の利用者とのとりかえしのつかない人的なトラブルが発生する前に、また地域の生物多様性が壊滅的な打撃を受けてしまう前に、どうかくれぐれも迅速な対応をお願いいたします。今回のように公園管理者が極めて迅速な対応をされたとしても、これぐらいの被害は覚悟しなくてはいけませんからねぇ…。